第7回 女性専用?

 うっかり女性専用車両に駆け込んだ男性は、女性たちに睨まれて当然なのだろうか。周囲が女性ばかりであることに気付くと、気の毒なほど身を縮めていた。
 その時の違和感は、山崎ナオコーラさんの『ブスの自信の持ち方』(誠文堂新光社)を読んで、より強く自覚することになった。それは、女性の特権でも、男性を排除するものでもない。男性が間違えて乗っても、何かの罪に問われるようなことではないのだ。
 その本の出版記念で、山崎ナオコーラさんのトークイベントを開催したが、「男性でも参加してよいか」といった問合せを、電話で何件か受けていた。「ブス」という言葉が、男性から言われて傷つく女性をイメージさせるからだろうか。
 だが、この本の中での「ブス」に男女の差はなく、ブスを蔑視する人がいることを問題としている。人間が傷つくのは、ブスだからではなく差別されるからだ。
 私は「ブス」というテーマに興味を持ってくれた全ての人に、ぜひとも参加してほしかった。しかし、女性に気を使って遠慮する男性がいることを知った。年齢も性別も関係なく、自分が好きな本を堂々と買えて、好きなイベントに参加できるような書店にしなければ、と思った。

(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

(本紙「新文化」2019年8月8日号掲載)