今回は、ダウンロード数・売上げともに国内No.1のマンガアプリ「ピッコマ」を運営するカカオピッコマ(カカオジャパンから改称)に、若年層に人気のマンガの動向を聞いた。同アプリは18歳以上推奨のため、本連載の対象のYA世代よりは少し年上の、18歳~24歳に焦点を当て、「Z世代」という区切りで見てみたい。
「他の書店では、恋愛ジャンルがこの年代の女性にもっとも支持されている一方、ピッコマでは男女ともにファンタジーが強く、SMARTOON(縦スクロールコミック)では、『俺だけレベルアップな件』(写真)『悪女は砂時計をひっくり返す』などが人気です。ただ、他の年代には見られない傾向として、比較的若い人には、『極道高校生』『トリガー~僕の復讐劇~』といった学園ものも支持されています」(PRチーム広報・清原あすか氏)。
男性が好むのは、一見弱く見える人物が実は最強だったり、いじめられっ子の復讐劇など。女性では、ドラマなどで映像化された韓国コンテンツが流行しており、『片思いの合図』『偶然見つけた七月』などが読まれている。
「日本の出版社が提供するマンガでも、男女ともになろう系、ファンタジーが人気です。男性は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』『終末のワルキューレ』など。女性は悪役令嬢、契約結婚もののファンタジーロマンスが、とくに支持が高いです」(清原氏)
ノベルはマンガと比べてまだ作品規模が小さく、男女・世代別でさほど差がないそうだ。しかしやはり、ファンタジーものの『田中家、転生する』や『無自覚聖女は今日も無意識に力を垂れ流す』などが人気という。
もっとも、流行はつねに変化する。ピッコマのサービス開始は2016年だが、18年までの人気ジャンルは『恋するアプリ』『隣の奥様』『愛犬の法則』などの恋愛もの、『復讐の毒鼓』『リコール~あなたの復讐代行サービス』などのドラマで、いずれも設定は現代だった。
それが19年頃になると、急速にファンタジーがブーム化し、前述の『俺だけレベルアップな件』や『捨てられた皇妃』などがヒット。この傾向が21年現在まで続いている。
20年以降は人気の二番手にアクションが入った。ただ、このジャンルで人気の『盗掘王』『ゴッド オブ ブラックフィールド』『Retry~再び最強の神仙へ~』も、時間を巻き戻したり、魂が他の人間に憑依して人生をやり直すなどの「回帰もの」で、異世界転生・転移ものにも近い面をもっている。
「マンガから少し離れた位置にいる若い人たちには、情報量の多い作品はハードルが高く、なかなか響かない。その点、今の異世界系はテンプレ(お約束)があり、安心して読めるところがウケている。われわれとしては、今後もカジュアルなコンテンツを求める層を積極的に開拓し、それを入口にして色々な作品をお届けしたいと考えています」(執行役員・熊澤森郎氏)
(2021年12月9日更新 / 本紙「新文化」2021年11月25日号掲載)